医療が高度化するなか、新人看護師を育成するプリセプターシップの重要性が高まる
precept(教える)という言葉を語源に持つ、先輩の看護師(プリセプター)と新人による1対1の指導体制のことをプリセプターシップといいます。
新人が実践力を身に付けるのは、1997年の看護教育のカリキュラム改正以来、もっぱら現場になっていますが、現場の医療は、年々高度化の一途を辿っています。新人ナースが一人前になるには、仕事のなかで習得すべきことが、山のようにあるというのが現状です。
こうしたなか、現実と理想がかけ離れていると感じ、ショックを受け、最悪の場合、現場を去っていく新人ナースも少なくありません。看護実践能力の習得を支援すると同時に、精神面の支援を行うことも、プリセプターシップの大きな意義です。
プリセプターには、新人を見守っていく姿勢が必要ですが、その役割をとるのに適しているといわれる経験3~5年のナースは、中堅ナースとして様々な役割を担っていることが多く、オーバーワークになってしまう場合があります。
プリセプターシップには、中堅ナースを育てる職業教育的な意味もあるのですが、新人を育てるまでにプリセプターがつぶれてしまっては意味がありません。ゆとりを持って指導できるように、病棟全体で新人ナースとプリセプターを支援していくようなシステムを作っていくことが必要といえます。
病院における看護方式には様々な方式があり、それらを組みあわせることで、新たなバリエーションをつくることも可能です。 下記の機能別看護、チームナーシング、モジュール型継続受け持ち方式、固定チーム継続受け持ち制などが、代表的な看護師方式となっています。
機能別看護…業務活動の内容によって看護業務を決めていく方式です。たとえば、投薬や処置などの基本的な機能で看護師の役割を決定し、同じスタッフが複数の患者に対して、同一の機能を提供します。
チームナーシング…チームを看護の責任単位とし、チーム単位でケアの提供を行います。これまで多くの病棟でこの方式が導入されてきましたが、患者にとっては相談相手が一定しないなどのデメリットもありました。
プライマリーナーシング…1人の患者に対して1人の看護師が、継続的に包括的なケアを提供する方式です。入院患者と緊密な関係を築くことにより、看護ニーズをより把握でき、アセスメントから看護計画の立案、看護の実施、そして評価に至るまでを1人のプライマリーナースが行います。
モジュール型継続受け持ち方式…モジュール型継続受け持ち方式とは、数人の看護師がグループ(モジュール)を作り、そのグループで入院から退院までの看護を行う方式です。グループの設定は夜勤者の人数をベースにします。患者1人に対して1人の看護師が、自分の意思決定、判断にも続き継続した看護を提供することを目指します。
固定チーム継続受け持ち方式・・・上記の看護方式の効果的な部分をミックスさせて、究極的にはプライマリーナーシングの目的を志向するものです。担当官越しが入院から退院まで一貫して継続的にケア提供する一方、その看護師と患者を固定チーム(リーダーとチームメンバー)がサポートしていくスタイルです。それぞれの病棟の状況に合わせて、さまざまな看護方式を展開しましょう。
看護記録を書くポイント
数ある看護業務のなかでも、特に時間が掛かる業務が看護記録とされています。看護師の業務を効率よく行うためには記録の効率化は必要ですが、近年は医療事故や訴訟が増加しており、看護記録は詳細に書くべきとの意見もあります。効果的・効率的に看護記録をまとめる要点をおさえましょう。
看護記録の方式には様々な種類がありますが、効率的な記録の方向性を明確に示したのが、1990年代後半から導入されているクリニカルパスです。このクリニカルパスでは、項目のチェックやデータを書き込むだけで、記録の基本的な枠組みが成り立つシステムになっており、従来の「看護記録は、詳細に書くべき」という観念を変えるきっかけになりました。
一方、医療事故や訴訟が増えるなか、看護記録が訴訟時の重要な証拠として取り上げられ、弁護士などからは、「記録はできるだけ詳細に、経時的に書くことは、看護業務を増やすことにつながり、「ムダを省いて効果的・効率的なケアを提供する」という医療の流れに逆行しかねません。この矛盾を乗り越えるためにも、看護記録に何を書き、何を書かなくてもよいのかを確認する必要があるといえます。
看護記録を書くポイントは、以下の通りです。まず、状況に応じてチェック式、あるいは記述式など、記録の方式を選択します。急変のリスクがない患者に、経時的に詳細な記録をつける必要はありません。パスやフローシートなどのチェック方式を活用することで、記録の簡略化が可能です。逆に、急変のリスクがある患者に対しては、必要に応じて経時的な記録を行います。
次に、記録にはアセスメントとケア内容を残すことです。この場合、急変のリスクを判断することが、アセスメントに該当します。記録にはそのアセスメントとともに、アセスメントに応じてどんなケアを選択・実施したかを残す必要があります。「アセスメントが書けない」という声は、スタッフからよく聞きますが、患者に特有の病態生理などの知識なしには、けっして書けないものです。書けないと嘆く前に、確実な知識を身に付けましょう。
医療事故への対応
もっとも大切なことは、患者に対して、最善の治療に専念するとともに、患者と家族に対して、誠意を持って説明を行うことです。正式な事故報告は、医療事故報告書による文書で行うことを原則としていますが、緊急を要する場合は口頭で行い、その後文章によって報告します。
日常の準備として、医療安全管理室などリスクマネジメントを行う部署に、速やかに報告するシステムを作る必要があります。事故への対応は、組織的に行います。
患者や家族への説明は、透明性が確保できるように、主治医や病院の幹部職員を含めた複数で行います。過誤の事実が明白である場合は、事故を起こした当事者も通常は同席し、謝罪します。重大な医療事故の場合は警察署に届け出ることを、患者や華族に説明して了解を取る必要があります。公表する場合はプライバシーを尊重できるよう、患者と家族に綿密な相談をします。事故後の説明は一貫性が大切です。個人的見解に基づく軽率な発言を慎むためにも、選任の担当者を決め、対応します。
当事者に対する対応のポイントとしては、まず気持ちを静めるようにします。過失がある場合には、患者家族に、早い段階で謝罪できる場面を作ります。原因や事実関係がハッキリしない段階でも、当事者が心から謝罪することが、患者と家族の気持ち、当事者の気持ちを静めるためには効果のある場合があります。重大な事故の場合は、直後よりカウンセラーや友人、家族を付き添わせて衝動行為に走らないように注意します。事故によって生じている状況は明確に説明し、症状の緩和や治療などの対処方法を具体的に説明します。